●PCJ Interview
・File12 飯田かずな
・File11 河合俊哉
・File10 酒匂オサム
・File09 P.M.Ken

・File08 高木こずえ
・File07 太田拓実
・File06 鈴木心
・File05 青山裕企
・File04 小山泰介
・File03 奥本昭久
・File02 常盤響
・File01 辻佐織

●Company File
・File08 アドビ システムズ
・File07 富士フイルム
・File06 駒村商会
・File05 ジナー
・File04 ハッセルブラッド
・File03 シグマ
・File02 フェーズワン
・File01 ライカ

●Overseas Photographers
File09 Josh Madson
・File08 Michael Kenna
・File07 Todd McLellan
・File06 Mona Kuhn
・File05 Diana Scheunemann
・File04 Albert Watson
・File03 Nick Meek
・File02 Rankin
・File01 Ron van Dongen

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Digital Tools


▲新潮社「旅」(2007年)。アルマーニ特集。アルマーニ銀座ビルのオープンに合わせたビジュアル。同企画の他のカットでは銀座のビルを一棟ずつサンプリング撮影しコラージュをした。この頃からPhase Oneをメインに使う(クリックで拡大)

▲新潮社「旅」(2007年)。ルイヴィトンの商品撮影。古い絵画のテクスチャを写真に反映させていた一連のシリーズ。高解像度になってきてからは写真のテクスチャも作品の大きな要因となる(クリックで拡大)



●カメラ機材やデジタルツールの変遷

−−フィルム時代の機材は何をお使いでしたか。

P.M.Ken:僕はニコンでした。F4までいきました。学生の頃にニコンのFM2がやっと買えて。造形大に機材センターがあるんですよ。そこがニコンなんです。それでニコンのボディだけ持っていると、そこであとはレンズが借りれるので、それ以来ニコンですね。あとはMAMIYA645をよく使っていました。

−−デジタルカメラの変遷はどんな感じだったのでしょうか。

P.M.Ken:ニコンのD1、D2X、コダックのDSC-14n。今はPhaseOneも使いつつ、そこにD3が加わって、キヤノンの5Dも使っています。

−−被写体によって使い分けているのですか。

P.M.Ken: そうですね、最近は。動画を視野に入れていて5Dに注目していたら、本当に動画の仕事がきちゃったから、5D Mark IIを買いに行ったっていう感じなんですけれど(笑)。

−−ブログを拝見していますと、コンパクトデジタルなども取り上げていらっしゃいますね。

P.M.Ken:特にファッション、ポートレート的な撮影で、好きに撮っていいときはコンパクトカメラも使います。

−−ちなみにコンパクトデジカメは、今何をお使いなのですか。

P.M.Ken:GRを持っていましてけれど、今はライカのD-LUX4とパナソニックのG1が多いですね。マイクロフォーサーズのレンズでパナライカのレンズが1個あまっていて、それを付けられるボディが欲しかったので。オリンパスペンも使っていたのですけれど、色も使い勝手も自分には合わなかったので。

−−デジタルに移行されてからはどういった流れだったのでしょうか。

P.M.Ken:1996年からMacを使い始めるんですけれど、その頃まだD1もなかった時代なので、2000年くらいまでF4で撮ってフィルムをスキャンしていました。

−−ではフィルムスキャンの時代が結構長かったですね。

P.M.Ken:そうです。

−−1996年というと、インターネットが盛り上がりつつある時代で、デジタル写真の加工が普通にできるようになってきた時代でもあります。Photoshopも初代に近いバージョンですし、大きい画像はマシンパワー的にもハンドリングは大変でしたよね。

P.M.Ken:最初に買ったMacは「LC3」だったので相当重たくて。加工作業をしてエンターキーを押してから2時間くらいかかりましたね。その当時、僕は東京・初台に住んでいて、エンターを押してからそこから歩いて新宿のヨドバシカメラまでフィルムを買いに行って、帰ってくるとやっと処理が終わっている。そんな感じでしたね。

−−MacやPhotoshopの導入はかなり早かったと思いますが、それは何故でしょうか。今後デジタルが自分の写真の持ち味になるなどの考えがあったのでしょうか。

P.M.Ken:そこまでの確信はありませんでしたが、さかのぼると学生時代の卒業制作の頃から、写真だけれどもコラージュのような、リスフィルムで写真を撮って、そこに色セロファンを乗せてとか、そういう表現を試みていました。マニュアルですでにレイヤーをやっていたので、写真を写真として捉えない、グラフィック表現的な感覚は持っていました。

それとは別に、卒業をしてから1996年くらいまではモノクロは暗室で自分でプリントして、カラーのプリントをちょうど始めたばかりだったんですけれど、自分で行うと暴れちゃって同じ色が二度と出ない。仕事で使うにはしんどいというときに、どうやらアメリカではそれをコンピュータで出来るらしい、それがMacっていうらしい、Photoshopという暗室いらずでカラー現像的なことができるソフトがあるらしい。というところから入っていったんですよ。

−−資料では、当時デジタルによる合成写真の取り組みを始められたとありますが、それは仕事として納品するものだったのでしょうか。それとも、自分の作品ベースとしてでしょうか。

P.M.Ken:最初はPhotoshopで何ができるのか、練習がてらに遊びで作品を作っていたんですけれど、始めてすぐに暗室をシミュレートしているだけではだめだと思ったんです。そこにはオリジナリティを感じなくて、猫でもできる時代がいずれは来るなと思いました。

Photoshopを使うならPhotoshopでなければできないことをやらないと、一発撮りの人と差別化ができないと考え、合成加工に向かいました。最初、自分の写真を切り抜くことにすごく抵抗があったのですが、それでまた面白い絵がでてきて、それを見せると、当時は合成写真はそれほど視覚経験がなかったので「こんなのできちゃうの?」みたいにすごく驚いてもらえたので、この手法はありだなと思いました。

−−初期の作品はどういった合成をされていたのですか。

P.M.Ken:その頃ちょうど、デジタルですごいカメラマンがいるということでお声が掛かりマガジンハウスに返り咲くのですが、モデルがいて、その子の背景に漫画の手法を取り入れて、走っている人の後ろに線が入っていたりとかそういうイメージを表現したりしていました。

−−確かに、合成写真で納品というカメラマンはほとんどいらっしゃらなかったです。ちなみに出版社への納品自体は2000年以降、徐々にデジタルでもOKになってきていると思うのですけれども、やはりニーズに合わせて納品されてきたんですよね。

P.M.Ken:そうですね。

−−その頃から一気にポジがなくなってきた感じでしたよね。

P.M.Ken:そうですね。僕は無理矢理デジタルデータで納品していましたけれど、色見本を渡すとそれを反射原稿にされちゃうから、意地でも色見本を添えませんでした。

−−色見本を反射原稿にするのですか(笑)。

P.M.Ken:怖いんですよ。持っていくとその色見本をルーペで見始めるんです(笑)。

−−当時は受け入れる側のデザイナーやプリプレスが間に合ってなかったんですね。

P.M.Ken:ファッション系のカメラマンさんも最後までフィルムにこだわる人たちだったので、マガジンハウスなどは基本移行が遅かったです。




▲アパレルブランド「Ash & Diamonds」広告(2008年)。アートディレクター、スタイリスト主導のプロジェクトではビジュアルコンサルタントといった立ち位置になる(クリックで拡大)


▲ファッション紙「common & sence」(2009年)。合成写真が当たり前になってきた時代。わざと下手な合成で見せるというのも手法としてアリになってきた(クリックで拡大)



●現像はカメラとの相性

−−ワークフローの話ですが、デジタルカメラで撮ったRAWデータは何で現像していますか。

P.M.Ken:以前はAbobeのBridgeでサムネイルを見て、Photoshopで現像していました。今はLightroomは現像には用いていなくて、ニコン、キヤノンによるテザー撮影の時に使っています。

−−現像そのものは別のソフトで行っているということですね。現像したデータを合成する場合と、そのまま納品する場合があると思いますが、それは1回Photoshopに通すのですか。

P.M.Ken:必ず1回Photoshopで開いて、そこで全部確認して、最後にTIFFに変換して、仕上がりです。

−−Photoshop上で、仕上げのときに使う機能というのはどういうのが多いのですか。

P.M.Ken:明るさと固さはトーンカーブ、レベル補正で。もちろんカラーバランスも調整します。僕はカメラのホワイトバランスを厳密に設定しないでバラバラに撮っちゃったりすることが多いので、それをレンズフィルターでもう1回計ってみたりと、Photoshop上でホワイトバランスを調整することは欠かせないですね。どのカメラも同じ5200ケルビンに設定してもみんな色が違うんです。まあ、それがある意味個性というか、使いこなすべき部分なのでしょうけれど。

−−そういう意味では、フィルム時代のフィルム固有の色を大事にされる方もたくさんいらっしゃると思うのですけれども、P.M.Kenさんはフィルム的感覚は今でも残っていますか。

P.M.Ken:感覚的にはそれですね。デジタルカメラの使い分けは、レンズとセンサーっていう感覚です。

−−なるほど、被写体ごとにこのレンズとこのセンサーでいこうと判断してということですね。

P.M.Ken:ボディというよりはセンサーを見ている感覚です。




▲アパレルブランド「FCRB」カタログ(2010年)。10年近く続く「FCRB」のカタログ写真は、フィギュアによる架空のサッカーチームというテーマ(クリックで拡大)


▲Photoshopで編集中の画面。「FCRB」の撮影では、まず着衣した人間を撮影後、フィギュアを同じ光、アングルで撮影し細かくレイヤーに分けて合成していく(クリックで拡大)




●Photoshopの新機能とプロの現場

−−Photoshop CS5以降に、「CAMERA RAWの機能拡張」「パペットワープ」「コンテンツに応じた塗り」などの新機能がいくつか出ていますが、そういった機能はお使いになっていますか。

P.M.Ken:僕のPhotoshopの使い方はバージョン4の頃から基本は変わっていないので、CS5は新しいカメラのRAWデータを読み込んでくれるのが一番ですね。

CS5以降の新機能としては「パペットワープ」が使える気がします。撮影テーマとして人形のシリーズをやっているのですけれど、まさに動かし方が人間の形に切り抜いてそんなうまくはいかないですが、関節を決めて動くというパペットワープによって、今までできなかった微調整が行えそうなので、駆使できれば人形のシリーズは面白い表現ができそうな気がします。

−−CS6のβ版には「コンテンツに応じて移動」という機能があって、例えば、あるシチュエーションの中にモデルさんがいて、モデルさんの位置を切り抜いて移動すればモデルさんが元いた場所も補正される機能がありますけれど、そういう機能はいかがですか。

P.M.Ken:便利ですが、後はクオリティだと思います。Photoshopの自動選択がどこまで切り抜けているのかを拡大して確認していくのであれば、そのときにパスを入れていくのと手作業的には同じになります。本当に高い精度でモデルさんの元の背景が埋まるミラクルが起こっているのであれば、それはそれでありだと思います。

−−プロは便利さよりもクオリティですね。

P.M.Ken:試みとしてはよいと思いますし、そういう機能はもっと進化すべきだと思います。でもプロは、カメラのオート化やプログラム、TTLの精度が上がっても結局マニュアルで操作しますよね。そこだと思うんです。

でも、Photoshopのいわゆる自動選択や、コピースタンプ機能の高品質化は望みますし、RAW現像の色管理のアルゴリズムには進化をすごく感じています。

−−例えば「crosspoint」の写真で電信柱や電線が気になった場合はご自分で消したりするのですか。

P.M.Ken:これは消さないです。残すために電線すら切り抜いてます。

−−そのままの写真を使うというコンセプトですね。写真に写っているディテールはすべて活かす方向での合成ですか。

P.M.Ken:これからの課題だと思うのですけれど、Photoshopを通したことによって、現場はみんな「すげー」になるんですけれど、それを見る側は意外と「どうせこれPhotoshopで顔ツルツルにしたんでしょ」といった、加工したから嘘だとか価値が下がる、後ろめたいという感覚があります。

でもそうではないんだと。使う人のセンスによる面はありますが、合成は合成、そういったフローは必要不可欠で、価値のあることなんです。合成はちゃんとアートであって、また職人技なんだというところに僕は着地したい。

−−なるほど。いかにも加工しましたという写真は表現としてまだまだなんですね。

P.M.Ken:たぶん、テクニックに走りすぎてそれをアピールしすぎるとバタ臭く見えてしまいます。

−−ワイドのレンズを使う人では、ゆがみが気になるので「ゆがみ補正」とかを使う方がいらっしゃいますが、そういうのはお使いになりますか。また「crosspoint」の元写真は広角が多いようですが、ゆがみがあると合成の作業は難しいのですか。

P.M.Ken:そんなことはないです。アングルが決まっているので、左側に写っているものは撮影の際に左側にしか配置していません。だからといって、完璧にパースを合わせているわけでもないのですけれど。普段の合成からそうですが、絵を作るときはアナログでやっているんですよ。たぶんこの人物が左側に来ると思ったら、左下に入れて撮るんです。それを僕の感覚では「レンズの腹を使う」と言います。レンズの曲面があったら、曲面の左下で撮るという。なのでパースのゆがみも活かして撮るんです。それを同じ画角のレンズで合わせているまではしていないのですけれど、感覚的な感じで。




▲「Times Square,109」写真集「crosspoint」より(2010年)。合成写真であることが、どのようにアートとして作品性を持つことができるのかの試み。心象風景を具現するという写真古来の文法を、今の時代の価値観で再構築したシリーズ。古くからの写真としての価値観を保ちつつ、写真技法の進化としてデジタルを組み入れていく(クリックで拡大)



●今後の活動について

−−今後の活動についてですが、「crosspoint」」の方向性をもう少し詰めていく感じでしょうか。

P.M.Ken:「crosspoint」に関しては、どんどんサンプリングする場所が変わって、どのぐらい世界を網羅できるのかということなので、しばらくはこれでいけると思います。

−−ちなみに、1つの場所の写真を撮るときにまず、ラフは描かれるのですか。

P.M.Ken:ケースバイケースです。そもそも海外に行ったとき、本当に観光写真的に、あとで合成の背景に使えるだろう的に撮っている癖があるんですよ。そういったアーカイブがあって、「crosspoint」はそれにちょうどはまったという感じです。

−−今後の作家活動と、商業写真家としてのベースはどういう割合で考えていきたいとお考えですか。

P.M.Ken:今のところは両輪ですね。作家だけで食えるなら素敵な気はしますが、現に商業写真を続けてきていますし、それはそれで面白いので。

−−両方があって、カメラマンとしてバランスがとれている感覚がありますか。

P.M.Ken:僕の精神衛生の問題ですが、ありますね。

−−最近の活動ではVOGUEやSPURなどの女性誌が多いですね。ビューティー系も撮られていますし、アイドル系もあります。結構幅広いですよね。

P.M.Ken:そうですね。僕自身が限定していないというか、ファッション専門ですと言ったこともないですし、物撮りや人物しか撮らないといった言い方をしたこともないので。そこもディレクター的な視点もあって、やりたいことの被写体がたまたまモノだったりモデルだったりといった、そんな感じなので。

ちょっと面白いのは、ストリート系の男性誌とハイファッション系の女性誌はデジタル加工したちょっと変な写真を受け入れてくれるんですけれど、女性誌のストリート系と男性誌のハイファッションは、僕の写真を受け入れてくれないんですよ。

−−面白いですね(笑)。

P.M.Ken:ストリート系女性誌は、ポラロイドで自然光、みたいな世界じゃないですか。男性ファッション誌も今はないと思いますが8×10で一発で撮る。しかもモノクロでといった美学があるので、その2つからはあまり呼ばれません。

−−逆にストリート系男性誌とハイファッション系の女性誌は革新的な絵柄が好まれるのですね。

P.M.Ken:そうですね、クリエイティブで見たことのない、そういうビジュアルを好む人たちですね。

−−なるほど、そこにP.M.Kenさんの写真表現の真骨頂があるのでしょうね。本日はありがとうございました。





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